僕と彼女と斉藤和義
まず音楽に関する思い出話をしたい。
僕が音楽を聴きだしたのは中学生になってから。
当時大ブームだったおニャン子クラブでカセットを聴き始めたのが最初だ。(今聴いても「じゃあね」は名曲だと思う)
当時中学二年生。
今聴いても、というか今も聴く名曲の数々に圧倒され、洋楽ロックにのめりこむ。
そして19歳の時、NIRVANAが音楽業界をひっくり返した。
忘れもしない、NIRVANAを初めて聴いたのは、1992年ガンズアンドローゼズの東京ドーム公演の、ライブ開始前に流れる会場BGMだった。
あの衝撃は今でも覚えている。
『Smells Like Teen Spirit』のリフが大音量で流れ、シンプルでかっこよすぎる曲に痺れた。
正直、その後のガンズのライブよりもその曲のインパクトの方が強かったくらいだ。
NIRVANAが僕に与えたのは、ある意味でメタルからの解放だった。
メタル以外クソだ。
貧弱、貧弱ぅ!という感じだ。
本来、メタルは聞いていると馬鹿にされるべき存在だ。
うるさい、何言ってるかわからない、歌詞が悪魔か女かで頭悪い、労働者の音楽、だいたい当たってる。
そういう差別される側の自分が、聴いてる音楽=個性だと勘違いして知らず知らずのうちに排他的、保守的になっていった。
自分の偏見や中途半端なこだわりは粉々に砕け散った。
それまでの自分をかっこ悪いとさえ思った。
話は逸れるが忘れられない話がある。
自分が通っていた高校(西日本の田舎)にメタル好きのロン毛がいた。
メタルのロン毛だ。
ある時、毎月買っていたメタル雑誌BURRN!の読者投稿欄に目をやると、自分の通ってた高校の名前があるでないか。ロン毛の彼だ。
そしてそこには、「僕は●●に住む高校生です。メタルが好きでロン毛にしているけど、女子から汚いとか(陰口ではなく)罵声を浴びせられます。でも、僕はメタルが好きだから絶対に髪を切りません!」という趣旨のことが書かれてあった。
そいつとは話したことはなかったけど、そうか、苦労してんだなと少し心の中で応援した。
でもそいつは結局、推薦で早稲田大学に受かり、卒業前に髪をバッサリ切っていた。
なんじゃそりゃ。
話が脱線した。
NIRVANAのせいで、いやおかげで、僕はメタルの呪縛から離れて色々な音楽を偏見と抵抗なく聴ける土壌ができていた。
大学に入った頃には、すっかりオルタナティブになり、Suicidal Tendencies、Butthole Surfers、Alice in Chainsなどがお気に入りだった。
そして出会ったのである。
それは当時、神奈川テレビでやっいた伊藤政則のミュージックトマトという番組を観ていた時だったと思う。
CMで何か気になる曲が流れた。
その時、めちゃくちゃいい曲だと思ったわけではない。
でも、なにか気になる。タイトルも含めてとにかく気になる曲だった。
それまで、日本人の、しかも普通のロック的な曲はあまり興味がなかった。
しかも、ロックバンドとかじゃなく、斉藤和義って個人名でやってる暗そうな男である。
自分にとってはとてつもない例外と言っていい。
それが、結果的にこのアルバムは何度も何度も何度も何度も聴くことになる。
そして、次のアルバム『素敵な匂いの世界』で決定的に好きになる。
世界とまっすぐに向き合えない不器用な男の、ナイーブで女々しくてひねくれた歌詞
自分の気持ち代弁していたというわけではないが、同じ空気、同じ感覚を共有してるように感じ、もしかしたら初めて音楽というものに寄り添ってもらえた体験だったかもしれない。
当時は大学1年生で、真面目に学校に行くのも馬鹿らしく、どこに向けていいのかわからないエネルギーを持て余しながら何もしてない状態だった。
その当時、友達との飲み会で知り合った高井麻巳子に似た女の子に恋をして、猛烈にアタックしたあげくようやく付き合うことになった。
19歳のカップルである。
くだらないことで嫉妬し、ケンカし、仲直りし、身を捧げて全力で付き合った。
そこにはいつも和義がいた。
当時、二人でよくカラオケに行っていた。
僕はあまり邦楽に詳しくなかったから、やはり和義を主に歌っていた。
彼女はそれほど気に入っているわけでもなかったようだけど、まだ無名の和義が「売れるといいね」と言ってくれていた。
そして、サードアルバム『WONDERFUL FISH』が発売される。
このアルバムではポンキッキーズのテーマ曲になった「歩いて帰ろう」が有名だ。
これで和義もブレイクだ。そう思っていたが、それほどでもなかった印象だ。
このアルバムの中では、終盤の「例えば君の事」「deja vu」「無意識と意識の間で」「引っ越し」の流れが最高で、特に「例えば君の事」は大好きでどれだけリピートして聴いたかわからない。
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4枚目は『FIRE DOG』。
このアルバムでは「砂漠に赤い花」「空に星が綺麗」「桜」が好きだった。
この頃になるとCD屋で、「今年ブレイクするアーティスト!」というPOPを貼られていた記憶がある。
5枚目『ジレンマ』では「郷愁」、6枚目『Because』では「月影」あたりが好きだった。
アマゾンの『Because』のページに当時の評論が一部掲載されていて「デビュー以来{未完の大器}の呼び声がつきまとってきたこの人もこれでアルバム6作目。そろそろ決定打がほしいところ・・・」と書かれてある。
この頃に覚えてるのが、CDショップでは中村一義と一緒に並べられていて、「Wカズヨシの時代!」みたいなことが書いてあった。
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そして7枚目『COLD TUBE』、8枚目『35 STONES』を最後にCDを買わなくなった。
それは、曲が良いとか悪いとかではない。
和義のことが嫌いになったわけでもなく、もちろん才能を見限ったなんてことはない。むしろ、変わらないテンションで今も第一線でやり続けていることは本当に尊敬しているし、「やさしくなりたい」が家政婦のミタで使われてヒットした時なんて、本当にうれしかった。
でも、そういうことじゃなくて。
自分も成長し、和義も成長し、少しずつ違う方向に進んで行ったのだと思う。
自分の中で、一つの時代が終わったという感覚。
今、この記事を書くために振り返ってみると、一緒に和義を応援してくれていた彼女と別れたのもその頃だった。
嫌いになったわけではない。
気付いたら違う道を歩いていた。
自分勝手で幼稚でどうしようもない自分を支えてくれた彼女。
そんな彼女と一緒にいた時期に和義もいて、何度も何度も聴いたり歌ったりした曲が『素敵な匂いの世界』の「彼女」という曲。
ぜひ聴いて下さい。
斉藤和義の紹介をしようと思って書きだした記事が、昔の彼女の話になってしまいましたが、音楽って思い出とすごく結びついて記憶されますよね。